“留学生の採用”をご検討の企業の皆さまへ。

専門家インタビュー

留学生の専門性とバイタリティが、企業に新しい風を起こします。

留学生を対象とする採用活動において、企業の皆さんが知っておきたい情報を留学生の就職活動サポートの経験をもつ専門家に伺いました。

1 日本企業は「ステイタス」

昨年、留学生の就職活動全般をお手伝いしたことで、留学生の採用実績がある企業を中心に訪問させていただいた経験があります。そのときに感じたことからお話させていただきますと、序盤から大変言いづらいのですが、今では採用を見送っている、いくつかの企業に対して、私はあまりよい印象をもつことができませんでした。それは留学生を採用すれば、賃金が安く抑えられるとか、あるいは日本に留学する外国人は皆さん、それなりに裕福な家庭のご子息が多いので、彼らを採用することで海外での商売を有利にするコネができるのではないか…そんな下心のようなものが企業の側に見え隠れしていたからです。

では、留学生側の意識はどうなのでしょうか。私は40名ほどが在籍する留学生クラスを担当したことがあるのですが、日本の企業に就職して、日本でずっと生活していきたい、国籍もほしいという学生もいましたが、日本で技術を身につけ、自国に帰って商売がしたいという学生も少なくありませんでした。では、なぜ日本の企業で仕事がしたいのか。それは日本企業に勤めていたということが、ステイタスになるからなのです。同じ技術でも、日本で学んだ技術はレベルが高いと捉えられているようです。技術を身につけたら、なるべく早く自国に帰りたいという本心を隠しているかどうかは、面接試験だけでは見抜くことは不可能です。これは日本人学生の本心を探るのが難しいのと同じことです。

2 留学生の仕事には制限がある

次に、留学生の採用時に企業が気をつけなければならない点をご紹介します。

まず、「こういう人材がほしい」という、コンピテンシー基準を明確にしておくことです。これは留学生に限ったことではなく、日本人を採用するときも同じです。しかし、留学生の場合は「なぜ、その留学生を採用する必要があるのか」とか、「どのような仕事をさせるのか」といったことを必要書類に記載して、入国管理局に提出しなければなりませんので、はっきりさせておく必要があります。書類作成に関しては、その煩雑さゆえに留学生の採用に踏み切れないという経営者の方もいらっしゃると思います。その場合は、外国人雇用に精通する行政書士に一任する方法もありますが、費用が発生することを念頭に置いておいてください。

そしてもう一つ、留学生が就くことができる職種には制限があります。「人文知識・国際業務」と「技術」です。留学生が日本の学校で学んだ知識や技術を活かせる職種でしか、採用が認められていません(詳細は厚生労働省のホームページをご参照ください)。簡単な例を挙げますと、ホテル学科で学んだ留学生を採用した場合、その留学生ができるのは、フロント業務が主になり、料飲部門(宴会業務)には携わることが原則困難だということです。留学生には、学びに沿った専門性のある仕事をしてもらうことを大原則としている点も理解してもらいたいところです。

3 インターンシップは“お試し期間”

次に、留学生の採用時に企業が気をつけなければならない点をご紹介します。

自社のコンピテンシー基準に合致する人材か否かを、採用試験の前にある程度確かめられるのが、インターンシップ制度です。留学生に会社に来てもらい、実際に仕事をしてもらったり、社内の雰囲気を感じてもらったりするわけです。企業にとっては留学生がどんな人物で、どんな能力をもっているのかを知ることができますし、留学生からすれば、自分に合った企業かどうかを見極めることができるので、両者にとってメリットのある取り組みといえます。企業は“お試し期間” と捉えて、積極的に実施してみてはいかがでしょうか。しかしその際は「特定活動」(9号)の要件を満たす必要がありますので、本人を交え、学校側との打ち合わせも重要になってきます。

最後に、採用後に気をつけたいことについてですが、例えば、中国に進出の計画があり、そのために中国人の留学生を採用したとします。しかし、その後、進出の計画が中止となった場合、留学生にしてもらう仕事がなくなってしまうわけです。しかし一度、雇用した責任において、「就労可能な職種」の仕事を与え続けなければ、本人が在留資格を失ってしまうことになりかねません。ですから、海外進出の計画が“希望的観測” ではなく、かなり実現可能な状態になければ、その業務に当たる留学生を採用することは一考することが望ましいと考えます。

留学生の採用には、メリットもあります。私が訪問した企業でよく聞いたのが、「留学生が入社すると、社内の空気がピリリと引き締まる」という声です。留学生たちは相当の覚悟をもって日本にやって来て、とにかく一生懸命勉強します。そして、よく働きます。高い収入を得たいとか、結果がほしい、上に行きたいと理由は様々ですが、それがバイタリティとなって、周囲によい刺激を与えているようです。新入社員は職場に新しい風を吹き込む存在であるという考え方からすると、特に留学生の存在感は圧倒的ともいえそうです。

採用活動は企業の一大事業です。学生たちに自社の現在の状況や将来の展望を明示できるかどうか、見直してみる機会にしてはいかがでしょうか。

PROFILE

新田 匡宏さん

SCC株式会社 代表取締役

新田 匡宏さん

MASAHIRO NITTA

学生に就活を指導し、また企業の採用担当者に面接のやり方を指導することができる専門家として定評があり、双方から講師の依頼が後を絶たない。講師実績は厚生労働省、宮城県教育庁、一般企業、大学、専門学校、高等学校等、ほか多数。